草った人生

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日本の学生民族舞踊におけるガラパゴス化について その1

書きながら思考をまとめようと思って書いているので、まとまりがないのはしょうがない。そんな人生。

日本の大学生の民族舞踊サークルは大体どこも似たような踊りを踊っているのだが、よく見ると全然違う踊りになっていることがよくある。今回はその辺を考えていきたい。

1.背景

1950~1960年代のアメリカのStockton Folkdance campの踊りがほとんどであり、そこで習ってきた人物がこの時期に日本中に広めたらしい(それ以外の踊りとしては、各サークルが別個に現地に行って習ってきた踊りや、特定のツテから学んだ踊りなんかがあるけど、今回はその辺は考えない。)。その後一時は全国の大学に民族舞踊サークルができたらしいのだが、その後徐々に消えていき、今は10前後のサークルが残るのみになっている。

各サークルでは各学年の指導部長が、これまで踊られてきた記録を見ながら1年間に踊る踊りを決め、部員を各踊りの担当者として指名する。担当者は指導者(前回担当となった部員あるいは元部員)から踊りを習い、練習して一定のレベルに達した承認をもらった上で、例会で全部員に踊りの概要を教える(Call)。これが基本の流れである。僕のサークルでは、踊りによって二年に一度しか担当されなかったり、部員が皆に紹介したい踊りを自主的に担当したりする。

 

2.舞踊のガラパゴス化とは

これは僕のサークルでよく使う単語なので他のサークルでは指摘されていることなのかわからないが、サークルごとの踊りの変異のことを指す。全国行事などで他のサークルと踊るときに、細かい部分の違いに困惑することがある。個人的には姿勢の高さや足の伸ばし具合、足の踏み方などの変異が多い気がするが、稀に踊りの動きの順番からして違う場合などもある。これらを日本の携帯電話になぞらえてガラパゴス化と呼んでいる。

ガラパゴス化という単語はビジネス用語である。日本の携帯電話が外国と隔離された中で国内の技術によってのみ発展、形態が固定化したことを、生物学における適応放散の例としてよく挙げられるガラパゴス諸島の生き物に例えている。く使われるのはガラパゴス携帯(ガラケー)だが、他の製品についても語られる。そしてこの語が指し示す中心的な意味は工業製品の発展と進化生物学の類似性ではなく、隔離された市場で競争に勝ちその市場で基準化した技術が、外部の新技術を取り込むことができずより大きな市場の競争に打ち勝った製品に駆逐されることである。

詳しくはwikipedia参照

ガラパゴス化 - Wikipedia

舞踊のガラパゴス化と言う時には、このメインの意味ではなく単なる異所的な文化の変異を指していることが多い。自サークル中心主義的な発想ではあるが、ディスってるわけではないのだ。しかし、ガラパゴス化というワードに覆い隠されて、変異の内実がよくわからなくなってる気がするので、今回分析してみた。

 

3.変異について

まずもって舞踊行為は、その時間間隔の短さから明らかに自然選択や遺伝的浮動の影響は受けないだろう。したがって文化的な変異現象にのみ注目する。

3-1.指導者における変異

指導者が先代から習ってから指導するまでに指導者の中で舞踊情報は変異する。変異のうち、

・完全にランダムに変化する部分(記憶違い、混同など)

・各個人が自分の認知プロセスに従って修正する部分

に分けられる。前者は生物学における遺伝的変異(中立的な進化)に相当するが、後者は進化生物学では否定される目的志向の進化に相当し、一般的には一年程度の期間があるため各個人の認知プロセス自体にも変異がある。

3-2.継承時の変異

指導者が次代に継承する時には、その時点で指導者のもっている舞踊情報は正確には継承されない。この正確さは脳内の電子的情報を直接やりとりできない人間のコミュニケーションの不正確さによってランダムに損なわれ、指導者と次代双方のサークルへの帰属意識によってある程度は担保されるのだと思う。舞踊への熱意に関しては指導者の熱意は正確性に寄与するだろうが、次代の熱意は次に示す指導者へのモデルバイアスを解除するものとして働くのか強めるものとして働くのかはわからない。そして正確さが損なわれた部分はランダムな変異が起こるだろう(中立的な進化)。

次代は指導者以外に資料、前回の紹介(Call)、他の部員、他サークルの部員などからも情報を得る。複数の情報から継承する以上選択も働くはずである。内容バイアス(性的な情報や衛生的な情報などが広がりやすいとするもの)や、頻度依存バイアス(集団内の多数派か少数派によって次代への広がりやすさが変化するもの)の影響もありそうだが、モデルバイアス(なんらかの特徴によってモデルとされる人物の他の特徴が広がりやすい(有名なテニス選手のよく使っている帽子を好む人が多いなど))が一番強く働きそうである。この場合指導者にモデルバイアスがかかり、他の情報より優先的に保存されるはずである。

もちろんモデルとなる指導者があまりに集団内でかけ離れていた場合などは頻度依存バイアスがモデルバイアスを抑える動きをするだろうし、踊りによっては内容バイアスによりモデルバイアスによる指導者の間違いが保存されず、格段に精度よく伝えられ続けることも考えられる。ただ一般的には内容バイアスはあまり働かないだろうし、指導者が一年前にその集団に踊りを広げているわけだから、頻度依存バイアスはむしろモデルバイアスと共鳴する場合の方が多そうである。

 

3-3.紹介(Call)時の変異

時間的制約があり1対多であるので大きく正確性が損なわれる。ここでも中立的な進化が起きていると思う。

また、この段階での頻度依存バイアスは紹介される部員がCall外でどれほど情報を得ているかに関わる。閉鎖的、部員数が少ないサークルではモデルバイアスが強く働き、開放的、部員数の多いサークルでは頻度依存バイアスが強く働くだろう(Callerに、「~大学の~さんはやってませんでしたよ」などの質問が飛ぶなど)。この頻度依存バイアスは他の段階における変異を元に戻す効果を持つかもしれない。

 

3-4.復元に伴う変異

例外的ではあるが、部員数の減少などによって継承者が一時絶えてしまった踊りを復元する場合のことを考える。この場合は資料(テキストやyoutube動画など)にモデルバイアスがかか流ことが考えられ、資料の特性により変異が起きることが考えられる。紙資料は動きの順番や目立つものを書く傾向があるので、各動きの特徴が強調された固定的な踊りになることが予想される。一方で、動画資料は動画内の個人のランダム変異(癖など)を受け継いでしまったり、画角の問題により情報が変異することが考えられる。

 

3-5.結論

月並みだが、開放度(異なる集団間の交流数)が高く、集団内の個人の数が大きければ変異は起こりにくいことになる。また、具体的内容は不明ながら、内容バイアスのかかりやすい踊りについても同様である。

 

4.雑感

議論が雑すぎる。時間のあるときにもっと詰めていきたいものである。草

以下参考文献

https://www.amazon.co.jp/文化進化論-ダーウィン進化論は文化を説明できるか-アレックス・メスーディ/dp/4757143303