草った人生

腐った人生。草った人生。考え事の保存に。

舞踊の分類 その1

公務員試験に落ち、暇になっちゃったので筆がやけにのっている。

舞踊がどこに帰属するのかによって分類するのは、比較研究をする上で役に立つのでずっと気になっていたテーマである。と同時に、非常に手を出しにくい話である。舞踊の帰属集団の性質はモノによって随分違い、民族(属人的)だったり、村(属地的)だったり、特定の権威だったりする。いろんな分類の仕方を見てメリットデメリットを考えたいなぁ。

1.国別

一番当たり障りのない分類だと思う。パーティでよく採用されている分類であり、フォークダンス関連団体はみんなこれ使ってんじゃなかろうか。

現代では国境未確定地域は少ないため、基本的にはわかりやすく間違いにくい。曖昧でもいいから地図を見ればとりあえずどのあたりの文化かわかる、という意味でよく知らない人に紹介する時に役に立つ気がする。

大まかな国境が確定してから70年ほど経過しているので国ごとに文化が根付きつつある上に、これからの時代は再び国境が大きく変わる可能性は低く、これから数百年大きな国境の変更がなければ各舞踊文化は国を基盤としたものになると思われる。

デメリットは国境問題をそのまま受け継ぐことであり、Kosovoが独立してるのか否かとか中国と台湾を分けるのか否かとか微妙な問題をはらみ、国名変更(ユーゴの分裂、少し前の北マケドニア)などにより過去の資料がわかりにくくなる。

また、踊りの本質から外れることが多い気がする。旧共産圏のナショナリズム刺激や19世紀初頭の汎Scandinavia主義などの例外を除けば、ほとんどの踊りは特定の集団を起源としており、国民国家を起源としていることはあまり多くはない(アイヌ剣舞踊や琉球舞踊を日本の踊りとして定義づけていいものだろうか?)。

旧ソの衛星国家とScandinavia、Israelでは実態に即した分類になると思う。バルカンはむしろ地方の方が大事な気がするね!

複数の他国の踊りを楽しむ場で用いられるのが良いのだろうな。

2.民族別

国別と比べるとわかりにくくどの地域にどのような民族が住んでいるかは自明ではないので、知らない人にとってはハードル高そう。

多種多様な民族が混ざり合い、かつそれらの独自の文化がせめぎ合っている地域ではかなり有用である。ハンガリールーマニアウクライナはむしろこの分類法を使わないで理解するのはかなり難しいと思う(トランシルヴァニアモルダヴィア、ブコヴィナなど歴史的に複数国家を移動した地域が連続的に存在している)。詳しくはないが、コーカサス、アフリカなどで実態に即したものになる気がする。

現代Polandなど文化が国に根付いているところにとっては全く意味がねぇ〜。

特定の一つの多民族国家の国家内での踊り場や、民族的コミュニティにおいて有用っぽい。あと特定の民族文化を研究してる人にはありがたいのかもしれない。

3.舞踊団別

基本的には意味のなさそうなわけかたである。

例外としてRomafestはそれ以外のジプシーと舞踊団的効果のあるジプシーの差を考慮する時に使えそう。また、Riverdanceなど国境に捉われずに影響を与えていることもあるので、この分け方をしないと本質的に意味がない場合もある。

メリットがあるとすれば舞踊団は同じ踊りを舞踊団毎に違う振り付けで長年継承してるので、その変異の傾向が判別できることだろうか?そんなことが可能なのかはわからないが…

どこでも使え無さそう。舞踊団見に行く時に他の舞踊団との比較とかいらんし。

 

4.形態別 

カップル、グループ、ソロなど。さらにグループであればスクエア、コントラ、サークル、なしなど。

研究のしやすい分け方である。系統分析をしたい時にはこの考え方が使える気がする。例えばヨーロッパにおいては、ロングウェイ型であればカントリーダンスの影響、スクエア型であればカドリーユの影響である(チェーン型は多系統らしい)など。

デメリットはめっちゃわかりにくいことである。相当知識がないと意味がわからないと思う。

特定の一つの国家の踊り場の場合は有用かも。そして舞踊の表形の研究者にとっては必要不可欠な分け方である。

 

5.音楽的性質別

そのいち

民族音楽の世界にはリズムとノリをまとめた便利な言葉が色々あり、それでわけたらどうか?というアイデアである。BulgariaのRacenicaや、HungaryのVerbunk、Franceのmazurkaなどがある。

この分類をすること自体が非常に難しい気がする。各国の踊り場では、他の曲を別のリズム感風に演奏して別の踊りで遊ぶということが日常的に行われており、新しい民族舞踊は往往にしてそのようなところから発生するからである(よくなんか曲かかるたびにそのリズムでレギニッシュを踊り出す奴らを見る。自分もやる。)。この分類が仮に出来たとしても、できた時点で対応しない新しい踊りが生まれているだろうし、この分類が変な形で広まると自然な文化の変異を邪魔するだろう。

注文がしやすいので生演奏付きの踊り場で有用。というかBalfolkで発達してるのはこういう理由だと思う。

連続変化するために研究には使いにくいか?そうは言っても音楽の系統分析には役に立つはず。

そのに

リズム、ビート、テンポでわける。上のやつより意味が広いぶん、比較には役に立たない。

楽家がリズム、ビート、テンポを変更し、他のタイプの音楽っぽくできることが1番大きなメリットに思う。テンポを速くしたもの(Romafest Verbunkとか)、ビートを小刻みにしたもの(Slangpolska fran Barsebackとか)を見たことがある。メロディが変わることは少ないがこんな風に音楽って進化してきたんだろうな…